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『増補新版 霊柩車の誕生』で言及されていた日本文学および日本映画をリストアップしてみる

2016年5月20日

フムフムに、霊柩車についてのコラムを書いた。

なぜ霊柩車は金ピカになったのか? | [フムフム]

コラム内容を要約すると、大正時代に三大都市圏で同時発生的に霊柩車の利用がはじまった、都市人口が増えることによって火葬場まで遠くなったから、市電の発達によって「葬列」が嫌われるようになったから、戦前の知識人たちは霊柩車を嫌っていた、永井荷風や尾崎紅葉などの文豪は「自分の葬式のときには葬儀自動車なんて使わないでくれ」と遺言していた、はじめのころは貧者の葬儀によく使われていた、金ピカなのは東京の「米津工房」が派手なデザインで他社を圧倒して日本全国に売り込んだことが要因、昭和末期における和風建築タイプ霊柩車のシェアは「米津工房」製が7割を占めていた。

ネタ本は『霊柩車の誕生』であります。興味がある人は、コラムならびに当該書籍を読んでほしい。

増補新版 霊柩車の誕生

※表紙にうつっている龍を擁する金ピカ霊柩車の正式名称は「神宮寺宮型四方破風総黄金造り〈大龍〉」という。「米津工房」製である。

この本は、いまをときめく『京都ぎらい』の著者・井上章一のデビュー作だ。

京都ぎらいが暴露。観光客に知られたくない古都のウラ事情 | [フムフム]

井上さんが京都大学の人文科学研究所(人文研)に所属していたときに執筆したものであり、学内では賛否両論あったという。1984年に単行本、1990年に朝日選書、2013年に増補改訂版を発行している。30年間にわたって読み継がれてきたロングセラーだ。

本書において興味ぶかいと思ったのは「日本文学における霊柩車」というテーマだ。芥川龍之介の遺稿、寺田寅彦の随筆、永井荷風の日記において「霊柩車」の話題が出てくる。

フムフムのコラムでは「金ピカ」を主題としたので、『霊柩車の誕生』にて紹介されている文学作品について言及しきれなかった。おれの個人ブログで補足したい。いつか読みたいと考えているので、Amazonリンクを利用して箇条書きという形で記録しておく。

霊柩車が登場する日本文学や記録など

『増補新版 霊柩車の誕生』内の登場順。

『ウェストンの明治見聞記―知られざる日本を旅して』

著者:ウォルター・ウェストン
時期:大正4年
呼称:葬儀自動車

ウェストンの明治見聞記―知られざる日本を旅して

『凶』

著者 芥川龍之介
時期 大正12年
呼称:葬儀自動車

本文は1000字程度だ。下記リンク先でも読める。

【青空文庫】
芥川龍之介 凶

『札幌まで』

著者:寺田寅彦
時期:昭和七年
呼称:葬礼自動車

【青空文庫】
寺田寅彦 札幌まで

『断腸亭日乗・四』

著者:永井荷風
時期:昭和11年
呼称:霊柩自動車
新版 断腸亭日乗〈第4巻〉昭和十一年‐昭和十四年

『冠婚葬祭』

著者:長谷川幸延
時期:昭和16年
呼称:不明

本書には、提示できる書誌URLが存在しない。なぜなら文芸誌に掲載されたあとに単行本化されていないからだ。

長谷川幸延「冠婚葬祭」: 直木賞のすべて 余聞と余分

むかしの直木賞は、文芸誌掲載作からも候補作を選出していたようだ。長谷川幸延は6回も直木賞候補作に選ばれているが受賞は逃している。ちなみに『冠婚葬祭』は、掲載年の昭和16年に第五回新潮賞というものを受賞している。

長谷川幸延は、池波正太郎などを輩出している「長谷川信」門下だというのに、いまいち陽の目を見なかったようだ。しかしながら、大阪における葬儀社の一代記を描いた『冠婚葬祭』は、のちに映画化されている。

大阪ど根性物語 どえらい奴 [DVD]

配給は東映。主演は藤田まこと。鈴木則文の監督デビュー作。のちに『トラック野郎』シリーズを手がける。ウィキペディアを調べていたら『文学賞殺人事件 大いなる助走』の監督もしていた。筒井康隆原作であり、佐藤浩市が主演している。おもしろいカルト映画だった。

そういえば『お葬式』という映画もあった。監督は伊丹十三だ。

伊丹十三DVDコレクション お葬式

本編に登場する霊柩車は、宮型の「金ピカ霊柩車」である。

『死体紹介人』

著者:川端康成
時期:昭和4年
呼称:霊柩車
文豪の探偵小説 (集英社文庫)

これが手に入れやすい。ほかにも『川端康成全集 (1945年度版は第1巻に、1980年度版は第3巻に収録)』(新潮社)や『日本文学全集 第39巻』(集英社)に収録されているので、図書館などで読めるだろう。

『霊柩車(掌の小説、所収)』

著者:川端康成
時期:大正15年
呼称:霊柩車
掌の小説 (新潮文庫)

『婚礼と葬礼』

著者:川端康成
時期:同じく大正15年
呼称:霊柩車

婚礼と葬礼 (1978年)

ほかには『川端康成全集 (1980年度版の第21巻)』に収録している。

『愛情情語』

愛情物語 角川映画 THE BEST [DVD]

原田知世が主演している角川映画だが、本編にて「霊柩車を見かけてしまい思わず親指を隠すシーン」があるという。昭和の慣習を映し出している貴重なフィルムかもしれない。原作は、赤川次郎の同名小説。

愛情物語 (角川文庫)

本文にもおなじ描写があるのかは不明。

『暗黒世界のオデッセイ』

著者:筒井康隆
時期:未来
呼称:霊柩車

筒井康隆の直筆イラストによって「未来の霊柩車」を描いている。

『颱風とざくろ』

著者:石坂洋次郎
時期:昭和44年
呼称:霊柩車

颱風とざくろ (1966年)

作品内において、スピード違反で一旦は停止させられた霊柩車が、警官に見逃してもらえたエピソードが収録されている。

映画版は東映製作で、星由里子と黒沢年男が主演。テレビドラマ版は日本テレビ系で、松原智恵子と石坂浩二が主演のほか緒形拳が出演している。脚本は倉本聰。

『とむらい師』

著者:野坂昭如
時期:昭和48年
呼称:霊柩車

とむらい師たち―野坂昭如ルネサンス〈5〉 (岩波現代文庫)

霊柩車で銀行強盗を企てれば成功率がアップするはずだ、と書いてある。良いアイデアである。

『葬女(とむらいめ)』

著者:津村節子
時期:昭和52年
呼称:漆塗りの霊柩車
葬女 (集英社文庫 青 61-A)

以上が、『増補新版 霊柩車の誕生』にて言及があった文学作品および映画だ。

皇室と霊柩車

このほかにも明治天皇の大喪のときには霊柩電車が、昭和天皇の大喪のときには洋型霊柩車が使用された事情などにも言及している。

本書『霊柩車の誕生』が出版された昭和時代には、宮型霊柩車のほうが洋型よりも多かった。しかし平成28年現在では、洋型霊柩車の保有台数が宮型のそれを上回っている。日光東照宮とみまがうようなデザインの金ピカ宮型霊柩車は「目立つから」と避ける心情とは別に、皇室が「洋型」を用いたことが関係あるかもしれないと、著者の井上章一は述べている。当たっていると思う。

アメリカの霊柩車の実際

とある海外ドラマを見ていたら洋型霊柩車が登場した。日本でも使われている型だ。

DR.HOUSEシリーズ8 第20話 霊柩車正面

DR.HOUSEシリーズ8 第20話 霊柩車側面

作品名は『House M.D.』(邦題は『DR.HOUSE ドクターハウス』)である。第8シリーズ、第20話(DVD第10巻)に収録されている『POST MORTEM(邦題:親友の願い)』というエピソードのなかに霊柩車が登場する。

本作は『HOUSE』の最終シリーズにおける、いわゆる「ウィルソン編 全4話」の2話目に位置する。とても重要なエピソードであり、主役のハウス医師の親友であるウィルソン医師が、旅先で見知らぬ者のためにおこなわれている葬送を目撃してしまうシーンだ。事情を知っている視聴者にしてみれば涙無しには観られないカットだ。

ここまで長々と霊柩車にまつわる参考書籍紹介をしたのは、すべて『HOUSE』の布教のためである。

Dr.HOUSE/ドクター・ハウス コンプリート ブルーレイBOX (初回限定生産) [Blu-ray]

みんな! ドクターハウスを観るんだ! おもしろいから! レンタル店には必ず置いてあるし、月額千円のHuluでも観れる。(字幕版と吹き替え版の選択可)

「Dr. HOUSE」が見放題

いま気づいたけれど、Amazonプライム会員なら全8シーズン無料だ。(字幕版のみ)

Dr. HOUSE ―ドクター・ハウス― シーズン1 (字幕版)

おれのオススメは「日本語吹き替え版」である。普段は字幕派であるおれだがDR.HOUSEだけは日本語吹き替え版で見る。ハウス医師を演じている木下浩之の声色がハマっており良いからだ。ほかの日本人声優たちの演技レベルも高い。おれは全8シーズンを少なくとも5周くらい通して観ている。やたら面白いのである。こちらからは以上です。