自費出版の翻訳書「ナポレオンの元帥たち 栄光を追い求めた二十六人」の成立過程がおもしろい

2016年7月4日

翻訳者である乾野実歩さんが大学時代に原著を読んだ
→面白かった
→20年後。翻訳権が有効かを調べる
→翻訳権が消滅している
→翻訳した
→70万円かけて自費出版
→初版200部
→完売
→最終的に800部まで増刷した
→ふたたび完売
→現在は絶版
→国内のナポレオンマニアからは人気があるようで、現在はAmazonでプレミア価格がつけられている。

ナポレオンの元帥たち―栄光を追い求めた二十六人
ナポレオンの元帥たち―栄光を追い求めた二十六人

この表紙イラストの作風に見覚えがある人は、ぜひこのテキストを読むべき! いまではインターネット上で全文が無料公開されている。

ナポレオンの元帥たち―栄光を追い求めた二十六人―
http://grenada.web.fc2.com/

装幀は『ナポレオン ―獅子の時代―』や『ナポレオン~覇道進撃~』で有名な長谷川哲也氏の手によるもの。ナポレオンファンつながりで実現したようだ。

この自費出版による翻訳書の成立過程から学べるのは「翻訳権」の有効期限と仕組み。とくに1970年以前に海外で出版された洋書の翻訳書をセルフパブリッシングする場合には、踏まえておきたいノウハウが詰まっている。

原著は、日本ではまったく無名のR.F.デルダフィールドというイギリス作家が1962年に出版したもの。

R. F. Delderfield – Wikipedia, the free encyclopedia

ジャンルはナポレオニック。ナポレオンの一代記を描いたジャンルの総称をいうらしい。トルストイの『戦争と平和』も、広義のナポレオニック小説だという。

どうしてもこの本の翻訳書を日本で出版したかった乾野実歩さんは「翻訳権の10年留保」に着目した。

翻訳権の取得については「裏ワザ」を使うことができました。いわゆる「翻訳権の10年留保」です。

法律の知識がないので詳しいことは述べませんが、要するに「1970年以前に海外で出版された本のうち、出版後10年以内に日本で翻訳書が出なかった場合、その本の翻訳権は消滅する」というものです。

もっともここに「戦時加算」がかかってきます。これは日本が交戦中だった年数を加算するというものですが、私が翻訳しようと思った本は、この条件もクリアしていました(翻訳権については、後に契約を交わした自費出版社を通じて正式にタトル・モリエージェンシーに照会し、翻訳権が消滅していることを確認しました)。

引用元:「翻訳権 – fukuchan-neko」(リンク切れ)

ナポレオンが好きな人は、全文が無料公開されているので『ナポレオンの元帥たち―栄光を追い求めた二十六人―』を読むといい。たいへん質の高い内容に驚くはず。長谷川哲也のナポレオン漫画の副読本としても有用。

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