ゲルこと石破茂大臣お気に入りの萌えマンガ『地方は活性化するか否か』

2016年3月30日

フムフムで『地方は活性化するか否か』というコミック本についてコラムを書いた。

地方創生にまどわされないために読むべき1冊 | [フムフム]

地方は活性化するか否か (マンガでわかる地方のこれから)

Web漫画の書籍化だ。ライブドアブログ上で連載しているのは知っていた。以前、はてなブックマークでホットエントリになったからだ。

【第1章】最初から4コマを読む : Web4コマ 地方は活性化するか否か

地方創生担当の石破茂大臣もお気に入りらしく、自分の公式ブログで話題にしていた。

マンガ「地方は活性化するか否か」など: 石破茂(いしばしげる)ブログ

今回のコラムを執筆するにあたって、あらためて本にまとめたものを読んだ。萌え四コマのくせに、女子高生のくせに、ガールズトークのくせに、地方活性化にまつわる核心をつくようなツッコミが乱れ飛んでいる。何よりも、わかりやすかった。

おれは「地方創生」や「地域活性化」について何も知らなかったので、コラムを書くまえに、実際の事例を調べてみようと思った。図書館や書店などに行って何冊か借りたり買ったりした。

参考書籍を読んでいるうちに、石川県内の自治体の活性化事例がよく紹介されていることに気がついた。

石川県出身の有名人

石川県をご存じだろうか。古くは泉鏡花や室生犀星、芥川賞作家・西村賢太が没後弟子として私淑する藤澤清造、最近活躍している石川県出身者といえば、なんと言っても「マックスむらい」だ。AppBankの共同創業者である村井智建さんは石川県七尾市の七尾高校の出身らしい。leaf『雫』『痕』のシナリオライターである高橋龍也も七尾市出身って聞いたことがある。エロゲ界のレジェンドである。

県庁所在地である金沢市出身者といえば、作曲家でPerfumeのプロデューサーである中田ヤスタカだ。自衛隊基地も兼ねた小松空港のある小松市には、建設重機大手のコマツ製作所の本社がある。メディア野郎ことLINEの田端信太郎さんも小松出身らしい。(参照

アニメ関連だと、エヴァンゲリオンの作画監督(「アスカ、来日」の回など)を務めた本田雄とか、声優なら新谷良子、能登麻美子、洲崎綾ってところだろうか。『彼氏彼女の事情』で声優をしているので芥川賞作家の本谷有希子も挙げておこう。本谷先輩は松任市(現・白山市)の出身だ。おれの1学年上だ。べつの高校の先輩だけど。2005~2006年までの期間限定放送だった「本谷有希子のオールナイトニッポン」は好きだった。録音カセットを処分してしまったのが悔やまれる。

前置きが長くなったが、今回の『地方は活性化するか否か』のコラムを書くにあたって参考にした「地方再生」「地方活性化」にまつわる数冊のなかで取り上げられていた、おれが住んでいる石川県の自治体における活性化事例について書き残しておきたい。

『地方消滅』(増田寛也・編著)

第6章「地域が活きる6モデル」に「石川県川北町」が挙げられている。「消滅可能性」の予測データでは、日本でいちばん若年女性の増加率が高いとされている自治体だ。

川北町(かわきたまち)と読む。人口6千人ほどの小さな自治体だが、近隣の市町村からは「うまくやりやがった」自治体として有名だ。川北町は企業誘致が得意で、町内の土地に大企業の工場(松下電器産業、ジャパンディスプレイ)の誘致に成功している。財政が豊かなので、弱みがないため、平成の大合併のときにも独立を守りぬいた。

似たように「うまくやりやがった」自治体としては、野々市市が存在する。人口は5万人。この自治体も、むかしから企業誘致がうまい。20年前には津田駒工業という織機の世界トップシェアメーカーの工場を誘致、最近ではコストコの誘致に成功している。

石川県初出店のコストコが建っているのは野々市市柳町という場所だ。数年前に市政に移行したが、むかしは「野々市町」だった。松任市(現・白山市)の行政区画にある「飛び地」であり、柳町は田んぼしかない「いらない子」のはずだった。柳町にコストコが来ると知ったときには驚いた。

ほかにも「御経塚」という縄文遺跡しか取り柄のなかった場所にサティ(現・イオン)を建てたり。野々市という自治体は土地活用に秀でている。こちらも平成の大合併のとき、お隣の金沢市のラブコールを拒否した。財政に自信があるからだ。

地方消滅 東京一極集中が招く人口急減 (中公新書)

『地域再生』(香坂玲・著)

岩波ブックレットだ。薄い本だが、よくまとまっていて読みやすかった。

挙げられている10事例のなかで、石川県能登町(のとちょう)が紹介されていた。

石川県には「加賀地方」と「能登地方」がある。しかし、能登町は合併後の名称であり、もとは能都町(のとまち)・柳田村(やなぎだむら)・内浦町(うちうらまち)の3自治体であった。

本書では、能登町の民宿経営者が、中国人や台湾人の観光客を呼び込むために、いろいろ努力している話が紹介されている。これは知らなかった。

能登地方といえば、輪島塗りの輪島市(わじまし)、総持寺がある門前町(もんぜんまち)、原発のある志賀町(しかまち)、ローマ法王に米を食べさせた男がいる羽咋市(はくいし)、おれのばあちゃんが暮らしている七尾市(ななおし)、たまに仲代達矢がくる能登演劇堂がある中島町(なかじままち)、龍苑という店名のうまい大衆中華料理屋がある穴水町(あなみずまち)、で、能登町に何があるかといえば能登空港がある。

石川県民のおれとしては、能登町といえば「県の最北端にある珠洲市に行くときに通る道」という認識しかない。国道249号線沿いに建っている住宅はわずかであり、1万7千人いるらしい住民たちは、山を切り開いたところに住んでいる。何度が山のなかを営業車で走ったことがあるけれど、「山を飛び、谷を越え、ぼくらの町へやってきた~♪」という、ハットリくんのテーマを思わず口ずさんでしまうほどである。ちなみに、穴水町からふたつほど山を超えると内浦の港にたどりつく。パチンコ屋やコンビニもある。能登地方はサークルKが多い。スーパーマーケットもあるよ。

地域再生――逆境から生まれる新たな試み (岩波ブックレット) : 香坂 玲 : 本

『地域再生の罠』(久繁哲之介・著

この本はおもしろかった。『地域は活性化するか否か』を読んだ人は、つぎにこの本を読むことをオススメする。地域活性化によくある「駅前にファッションビルを誘致」「B級グルメで町おこし」「コンパクトシティ」の失敗事例について分析がおこなわれている。

石川県金沢市に、香林坊(こうりんぼう)という地域がある。ちかくには金沢21世紀美術館のほか、兼六園や金沢城趾があり、日銀やメインバンク支店、市役所がある。福井県の東尋坊(とうじんぼう)と音が似ているが、香林坊は繁華街である。

金沢市民にとって香林坊といえば109ビルが建っている場所だ。その名のとおり10(トー)9(キュー)すなわち東京急行電鉄の子会社であり、SHIBUYA109を筆頭に若者向けのファッションビルとして高いブランド力を誇る。

本書を読んでいて初めて知ったのだが、109は各自治体からの企業誘致に応じないことで有名らしい。唯一、誘致に応じたことがあるのは「東京都町田市」「静岡市」「宇都宮市」そして「金沢市」の4店舗だけ(2010年時点)。これは知らなかった。

本書『地域再生の罠』では、せっかく誘致に成功したのに、オープンから4年で撤退してしまった宇都宮市の109ビルにまつわる失敗要因を分析している。読めばわかるが、109の見込みが甘かったのではなく、宇都宮市の行政がひどいのだ。

宇都宮市といえば、すこし前までは「餃子(ギョーザ)の町」として地域活性化の成功例としてもてはやされていた。だが、いまは違うらしい。ほかにも宇都宮市の活性化施策はひどい。悪い見本のオンパレード。これから地方創生に関わろうという人の必読書だ。

地域再生の罠 なぜ市民と地方は豊かになれないのか? (ちくま新書)

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